料理研究舎リンネ(熊本県・南阿蘇村)
ryori kenkyusya linne
日常の自分をリセットできる、心地いい空間を目指して
料理人の江﨑里子さん、暮らし家の新田梓さんが主宰する「料理研究舎リンネ」。雄大な阿蘇五岳の麓、田園風景が広がる南阿蘇村。二人は自然豊かなこの場所に2011年に移住してきました。
〝アトリエ〟と呼ぶ、菜食ごはんの店は不定期でオープン。農作業や手づくり焼き菓子(動物性素材不使用)の通信販売をメインにしています。
「 “ゆっくりすること” を大切にする場所にしたかったんです。私たちが暮らしていくなかで “心地のいい空間” を作り、それをみんなにも共有してもらえたら」と新田さん。
リトリート施設でシェフをしていた江﨑さんが作る料理やスイーツは、心にしみるやさしい味わい。味つけはすべて天然調味料で、伝統製法で作られたものを使用し、基本的には塩と醤油と味噌だけ。塩は3種類使い分け、野菜の甘さや素材の風味を大切に。白砂糖を使わず、甘味料には自家製の米飴を使うというこだわりようです。
「スゥーと体になじんで、体や心がほんわりあたたかくなる料理を心がけています」と、江﨑さん。
二人は地元の人の協力も得ながら、無農薬でお米や野菜をつくり、農的暮らしを実践しています。お米はササニシキや、ヒノヒカリなどの品種を試してきましたが、現在は朝日米に挑戦。自然栽培なので田んぼの管理が大変です。
自家菜園では自然農法で無農薬野菜を栽培。春は小松菜や春菊、ルッコラ、夏はオクラ、トマト、カボチャ、ナス。秋はジャガイモやサツマイモ、冬は菊芋やほうれん草などを栽培しています。全体的に収量が少なめのため、料理に使う多くのお米や野菜は近所の農家から仕入れてくるのだとか。
サンショウの葉や春菊の花、ルッコラやオレガノ、パセリ、タイムなどのハーブ類は、店の前の菜園から、料理の直前に摘みとって添えます。画家でもある江﨑さんにとって、料理を盛るうつわは絵を描くキャンバスなのです。
二人は日々の農作業や料理、ぬか床をつくったり、梅シロップを仕込んだり。朝起きてから夜遅くまで、仕事をし続けます。それは、暮らすために働くのではなく、働く暮らし自体を楽しんでいるから。田んぼで手植えをするのも、畑を耕すのも、家のDIYをするのも、すべて幸せな時間なのです。
ふたりにとってはかけがえのない瞬間
田んぼからの帰り道、美しく咲く野花に癒されたり、車で移動中に見える阿蘇の大自然、ふたりを温かく迎えてくれる地元の人々。あるいは、朝起きたときに聞こえてくる美しい野鳥の声。夏はヒグラシの合唱に包まれ、秋は田んぼの稲穂が黄金色に輝く。近所で草花を見つけては〝季節〟を持ち帰り、料理や生け花に使います。
そんな小さな喜び。昔ながらの日本の原風景を感じることが、ふたりにとってはかけがえのない瞬間なのです。
「昔の人が日々の生活の中で大切にしてきたことを、現代の暮らしでデザインしていきたいんです。やりたいことがたくさんあります。まわりの農家さんが生産した、南阿蘇のおいしいお米などを活かして、麹や甘酒、玄米ミルクなどの加工品をつくりたい」と、新田さん。
ふたりがそれぞれの役割をフォローしながら、新しい生活のデザインを南阿蘇から全国へ発信しています。“心地のいい空間” を全国の人々と共有するために。
料理研究舎リンネ
熊本県阿蘇郡南阿蘇村一関230
TEL0967-65-8230
営 12:00~16:00
営業日は不定期(月に数回)です。時間は下記を参照ください。https://www.linnelab.com
(※留守電の場合が多いので用件を残してください)